1900914-1
塚本門下の先輩達に学ぶ生き方
神の力を固く信じる信仰
2019.9.15 東京聖書読者会 髙橋照男
２・吉田（茂）は再軍備をしない方が良かった（谷口茂栄）
６・米国教会は戦争中に日本教会のために献金していた（小寺利男）
８・復活の喜びを見せて下さったご遺体（田重田武春）
９・専門分野のことは専門家に任せる（豊田栄）
１・戦争に対し、昭和天皇は人一倍ご苦労された（藤林益三）
かって無教会の「キリスト教夜間講座」で「天皇の戦争責任」についてのシンポジウムがあった。シンポジストの一人であった故中沢洽樹先生は、「（昭和）天皇は戦後退位すべきであった」と発言した。中沢先生の兄であった中沢薫氏は.軍隊で上官による殺人命令に従えず自殺された。そのシンポジウムの様子を東京聖書読者会で報告したところ、最高裁判所長官としてしばしば昭和天皇に接せられていた藤林益三先生は私を咎めず「やんわり」と「（昭和）天皇は人一倍ご苦労された」と弁護された。天皇はマッカーサーとの初会見で「自らの身はどうなってもよい」と申し出た。また、１９４８年（昭和２３年）11月２９日に塚本虎二先生が天皇に「内村鑑三」について御進講されたとき、天皇は「内村の無教会は世界の人にわかるのか」と尋ねられた。無教会キリスト教に関心を持たれていたことがわかる。最近、NHKで初代宮内庁長官、田島道治(新渡戸稲造、内村鑑三門下の無教会)の「拝謁記」が公表されたが、それによって昭和天皇は戦争に対する道義的責任を感じて、他人に言われるまでもなく、自ら退位を考えておられたことが判明した。
福音は「侍従」という姿で皇室に接近したことは神の摂理であった。
塚本訳 Ⅰペテ2:17
2:17 凡ての者を敬え、すなわち教友を愛し、『神を畏れ、王を』敬え。
塚本訳 ロマ 13:1-2
13:1 人は皆上に立つ（国家の）官憲に服従せねばならない。神からではない官憲はなく、現存の官憲は（ことごとく）神から任命されたものであるから。
13:2 従って官憲に反抗する者は、神の命令に違反する者である。違反する者は、自分で自分に（神の）裁きを招くであろう。（この世で罰を受けるばかりでなく、最後の日にも。）
２・吉田（茂）は再軍備をしない方が良かった（谷口茂栄）
１９５１年(昭和２５年)のサンフランシスコ講和会議で日本は平和条約締結と同時にアメリカとの軍事同盟である日米安保条約を結んだ。警察予備隊は、名称を保安隊から自衛隊に変更、事実上の軍隊として人員と装備を拡充し、現在に至っている。これ片面講和であった。その頃ギリシャ語の勉強会の後のお茶の時間に塚本虎二先生は非公式にポロッと「吉田（茂）は再軍備をしない方が良かった」と周囲に漏らした。これを聞いた谷口茂栄先生（東京高裁裁判長）は塚本虎二先生に躓かないで済んだ。谷口先生は簡単に社会批判をする人を意識して、神とアブラハムのやり取りを引用しながら、我々は世の罪をとりなす最後の一人になれとしばしば戒められた。
口語訳 創 18:32-33
18:32 アブラハムは言った、「わが主よ、どうかお怒りにならぬよう。わたしはいま一度申します、もしそこに十人いたら」。主は言われた、「わたしはその十人のために滅ぼさないであろう」。
18:33 主はアブラハムと語り終り、去って行かれた。アブラハムは自分の所に帰った。
３・矢内原君は低空飛行しすぎたなー（雲野武夫）
塚本虎二先生がくつろいでおられた時のこと、「矢内原君は低空飛行しすぎたなー」とポロッと漏らされた。雲野武夫氏（出雲ゴム工業会長）はこれを傍で聞かれた。塚本先生の戦いは肉に対するものではなく、悪霊に対するものであった。肉の人間同士の平和ではなく、神と人間との平和という根源的な平和の希求であった。塚本虎二先生は「（矢内原君は）内村先生の平和的福音を具体的に説いていた」と評価していたが、１９６１年12月２５日に矢内原先生が亡くなると「（矢内原）君なくして日本は淋しい。君の後をつぐ者は誰か。」と書かれた。（聖書知識３８１号１０ページ）。しかしその後、両先生の弟子たちが「信仰と行為の問題」でいがみ合っているのは、両先生にとっては心外であろう。
塚本訳 ヨハ 18:36
18:36 イエスが答えられた、「わたしの国はこの世のものではない。もしわたしの国がこの世のものであったら、わたしの手下の者たちが、わたしをユダヤ人に渡すまいとして戦ったはずである。しかし実際のところ、わたしの国はこの世のものではない。」
塚本訳 エペ 6:12
6:12 私達の戦いは（この世の）血肉に対するものでなく、「権威」に対するもの、「権力」に対するもの、この暗の世界の主権者（なる悪魔）に対するもの、天上における悪霊（の軍勢）に対するものであるからである。
４・政池君、その罰金は私が代わりに払おう（斎藤顕）
戦時中、政池仁は軍部を批判したために当局に呼びだされた。当局は「君たちの（無教会）グループにはちゃんと国体を擁護している者がいる」と言って『聖書知識』誌を示し、政池仁に罰金刑を課した。政池仁はそのことを塚本先生に告げに行くと、「政池君、その罰金は私が代わりに払おう」と言った。塚本先生はこの世を相対化しておられた。これがキリストの生き方であった。
塚本訳 マタ 22:17-21
22:17 それで御意見を聞かせてください──（わたし達は異教人である）皇帝に、税を納めてよろしいでしょうか、よろしくないでしょうか。」
22:18 イエスは彼らの悪意を知って言われた、「なぜわたしを試すのか、この偽善者たち、
22:19 税の貨幣を見せなさい。」デナリ銀貨を差し出すと、
22:20 言われる、「これはだれの肖像か、まただれの銘か。」
22:21 「皇帝（カイザル）のです」と彼らが言う。すると言われる、「では皇帝（カイザル）のものは皇帝（カイザル）に、神のものは神に返せ。」
塚本訳 ロマ 13:6-7
13:6 それゆえに（同じ理由で、）あなた達は貢をも納めねばならない。官憲は神につかえる者であり、いま言った職務に全力をそそいでいるからである。
13:7 （彼らに対して、信ずる者には普通の人以上の、言わば借りがある。）すべての役人にこの借りを返しなさい。貢取りには貢を、官税取りには官税を、恐るべき者には恐れを、尊敬すべき者には尊敬を。
５・従軍は十字架を負わされること（松島省三・信子）
農林省の松島省三先生は出征するとき、動き出した列車の窓から信子夫人に一枚の紙片を渡された。そこには走り書きで
文語訳 ピリ 1:29
1:29 汝等はキリストのために啻（ただ）に彼を信ずる事のみならず、また彼のために苦しむ事をも賜はりたればなり。
と書いてあった。走り出した列車の中でそれを読まれた松島先生は滂沱の涙を流された。従軍は十字架を負うことであった。終戦で帰還してみると、子供が二人亡くなっていた。その後松島先生は稲の多収量の研究成果によって世界の飢餓地帯救済のために尽くされた。一時ノーベル平和賞の噂も上がった。こういうのが真の平和貢献である。戦争は食糧問題から起こることが多い。松島先は従軍されたが、霊魂は神に従っていた。これが霊肉の板挟みの十字架の道であった。先生の研究の励みとなったのは、一粒の麦として亡くなった子供たちの時々聞こえてくる天からの励ましの声であった。
文語訳 ヨハ 12:24
12:24 誠にまことに汝らに告ぐ、一粒の麥、地に落ちて死なずば、唯一つにて在らん、もし死なば、多くの果を結ぶべし。
６・米国教会は戦争中に日本教会のために献金していた（小寺利男）
２０１９年７月に昇天された小寺利男さん（小西六写真工業勤務）は、戦後になって米国の教会は日本の教会のために献金していたことを聞かされ、愕然とした。そして「日本は軍事力が足りないので負けたのではなく、精神的な面で負けたのだ」と悟り、キリスト教に目覚めた。この体験が小寺さんのその後の人生を決定した。
塚本訳 マタ 5:43-44
5:43 あなた達は（昔の人がモーセから、）“隣の人を愛し、”敵を憎まねばならない、と命じられたことを聞いたであろう。
5:44 しかしわたしはあなた達に言う、敵を愛せよ。自分を迫害する者のために祈れ。
７・狂える如くに終末を祈った。（植木静江）
植木静江さんは、結核になり、一人息子の信太郎君を抱えて無理心中を決行しようとした。それを知った塚本先生は、講壇から「誰か子供を引き取ってくれ！」と叫ばれた。一人息子が村松家に引き取られて行くとき、植木さんはその悲しさに「狂えるごとくに終末と再臨を祈った。信太郎君（後年は村松梅太郎に改名）は現在栃木県にある無教会集会の一つを主宰している。天上での植木さんの喜びや如何に。世の真の救いは終末と再臨の信仰であることを学ぶ。
塚本訳 マタ 24:30-31
24:30 するとその時、人の子（わたし）の徴が天に現われる。するとその時、“地上の民族はことごとく（これを見て）悲しむであろう。”そして“人の子（わたし）が”大いなる権力と栄光とをもって、“天の雲に乗って来るのを”見るであろう。
24:31 すると（その時、）人の子は“大いなるラッパの響きと共に”自分の使いたちをやって、“天のこの果てからかの果てまで”“四方から、”選ばれた人々を“集めさせるであろう。”
８・復活の喜びを見せて下さったご遺体（田重田武春）
１９８８年に昇天された田重田武春さんは出生の時に母親のへその緒が首に絡みついて脳が損傷し、社会生活では皆に馬鹿にされ、軽蔑されて一生ご苦労された。田重田さんの葬儀は郷里の長野県で行われたが、私がご遺体の顔に掛けられた白い布を剥いでみて驚いた。満面の笑みであった。傍におられたご夫人が「今にも起きてきそうでしょう」と言われた。田重田さんは正統信仰の「復活」を自らの「死に顔」で見せてくれた。神のもとに旅立つ時は誰でも一人である。塚本虎二先生は田重田さんのような方を尊敬しておられた。
塚本訳 Ⅰコリ1:26-28
1:26 論より証拠、あなた達のお召しのことを考えてみるがよい。兄弟たちよ、この世的には、（あなた達の中に）多くの知恵者がなく、多くの有力者がなく、多くの高貴の人がないではないか。
1:27 それどころか、世の馬鹿なものを神はお選びになった、知恵者に恥をかかせるためである。また世の無力なものを神はお選びになった、力のあるものに恥をかかせるためである。
1:28 また世の身分の低いもの、軽蔑されているもの、（いや、あっても）無い（ように思われている）ものを神はお選びになった、ある（と思われている）ものを無にするためである。
塚本訳 黙 14:13
14:13 また私は天から声が（こう）言うのを聞いた、「書け、『今から後主にあって死ぬる死人は幸福である。』」御霊も言い給う、「然り、彼らはその労苦（はたらき)を休息（やす）む（ことが出来る）であろう。その（為した）業が彼らに随いて行くのであるから！」と。
塚本先生引退後、「丸の内聖書知識読者会」の講壇に立たれた豊田栄先生が米国に行かれた時のこと。米国在住の日本人から、「現在日本の無教会は社会的発言をするグループと、信仰のみのグループとに対立があると聞いているが、どうなのか」と問われた。これに対して豊田先生は「政治などこの世の専門分野のことは専門家に任せる」と答えられた。これは万人祭司主義、無教会主義の徹底である。
塚本訳 ルカ 16:9-12
16:9 それでわたしもあなた達に言う、あなた達も（この番頭に見習い、今のうちにこの世の）不正な富を利用して、（天に）友人［神］をつくっておけ。そうすれば富がなくなる時、その友人が永遠の住居（すまい）に迎えてくださるであろう。
16:10 ごく小さなことに忠実な者は、大きなことにも忠実である。ごく小さなことに不忠実な者は、大きなことにも不忠実である。
16:11 だから、もし（この世の）不正な富に忠実でなかったならば、だれが（天の）まことの富をあなた達にまかせようか。
16:12 もし他人のもの［この世のこと］に忠実でなかったならば、だれがあなた達のもの［天のもの］をあなた達に与えようか。
塚本訳
黙 14:13
14:13 また私は天から声が（こう）言うのを聞いた、「書け、『今から後主にあって死ぬる死人は幸福である。』」御霊も言い給う、「然り、彼らはその労苦（はたらき)を休息（やす）む（ことが出来る）であろう。その（為した）業が彼らに随いて行くのであるから！」と。
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●以上９人について共通に言えること。・・・無教会キリスト者の生き方
塚本訳 ロマ 12:1-2
12:1 （このように、神は偉大な計画によって人類を一人のこらず救おうとしておられるのであって、救いは確かである。）だから、兄弟たちよ、わたしは神のこの慈悲を指してあなた達に勧める。あなた達の体を（感謝のしるしとして神に）捧げよ。この生きた聖なる犠牲こそ、神のお気に入るものであり、（霊なる神を拝むにふさわしい、）あなた達の霊的な礼拝である。（あなた達の礼拝は動物を供えるような不合理なものでなく、全心全霊をささげる合理的な礼拝でなければならならない）
12:2 また、この世に調子を合わせてはならない。むしろ反対に、何が神の御心であるか、何が善であり、お気に入るものであり、また完全であるかを見分け得るために、（御霊によって）心を一新されて自分を造りかえていただけ。（そうすれば来るべき世への準備ができる。）