エホバが我が嗣業(ゆづり)
「嗣業(ゆづり)」をめぐる旧約と新約の思想の違い
・・・イエスが民衆から見放された理由・・・
東京聖書読者会 2010.10.3 高橋照男
@旧約聖書における嗣業(ゆづり)とは、神から頂いた土地を所有すること
Aユダヤ人の「嗣業(ゆづり)の土地」思想はイエスの時代にも強固であった
Bイエスが殺されたのは、嗣業(ゆづり)の土地に関する思想の違いが原因
Cイエスの思想は地上王国の回復や王による戦争なき平和の構築ではなかった
D信仰は現実逃避ではない。来世と復活に希望が湧く人間が真にこの世を愛す
E詩篇16篇5-6節を新約の光で読む。祭司たる信者は土地や財産を欲しない
F国籍が天にあると自覚する信者は世の富や楽しみとは無縁で主が喜びの嗣業
G私達の嗣業は来世の土地と国。その実現は終末有体的復活の時。信じて待つ
H信仰が違う者に対してイエスが採った態度は、終末における神の裁きに期待
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@旧約聖書における嗣業(ゆづり)とは、神から頂いた土地を所有すること
文語訳 詩 16:5-6
16:5 ヱホバはわが嗣業(ゆづり)またわが酒杯(さかづき)にうくべき有(もの)なり なんぢはわが所領(しょりょう)をまもりたまはん
16:6 準縄(はかりなわ)はわがために樂しき地におちたり 宜(うべ)われよき嗣業(ゆづり)をえたるかな
口語訳 創 17:7-8
17:7 わたしはあなた及び後の代々の子孫と契約を立てて、永遠の契約とし、あなたと後の子孫との神となるであろう。
17:8 わたしはあなたと後の子孫とにあなたの宿っているこの地、すなわちカナンの全地を永久の所有として与える。そしてわたしは彼らの神となるであろう」。
口語訳 エゼ
48:29
48:29 これはあなたがたが、くじをもってイスラエルの部族のうちに分けて、嗣業とすべき地である。これが彼らの分であると、主なる神は言われる。
口語訳 イザ 60:21
60:21 あなたの民はことごとく正しい者となって、とこしえに地を所有する。彼らはわたしの植えた若枝、わが手のわざ、わが栄光をあらわすものとなる。
口語訳 詩 53:6
53:6 どうか、シオンからイスラエルの救が出るように。神がその民の繁栄を回復される時、ヤコブは喜び、イスラエルは楽しむであろう。
Aユダヤ人の「嗣業(ゆづり)の土地」思想はイエスの時代にも強固であった
塚本訳 ルカ 2:25
2:25 さて(そのころ)エルサレムに名をシメオンという人がいた。この人は正しい、信心深い人で、イスラエルの慰め(である救世主)を待ち望み、聖霊が彼をはなれなかった。
塚本訳 マタ 21:9
21:9 群衆は、イエスの前を行く者もあとについて行く者も、叫んで言った。──ダビデの子に『ホサナ!主の御名にて来られる方に祝福あれ。』いと高き所に『ホサナ!』
塚本訳ルカ 24:21
24:21 ほんとうにわたし達は、この方こそイスラエル(の民)をあがなってくださる人だと望みをかけていたのに!そればかりが、かてて加えて、そのことがあってから、きょうはもう三日目になったのです。(もはや生き返られる望みもありません。)
Bイエスが殺されたのは、嗣業(ゆづり)の土地に関する思想の違いが原因
塚本訳 マタ 5:5
5:5 ああ幸いだ、『(踏みつけられて)じっと我慢している人たち、』、『(約束の)地(なる御国)を相続する』のはその人たちだから。
塚本訳 マタ 5:38-40
5:38 あなた達は(昔の人がモーセから、)『目には目、歯には歯』──(人の目をつぶした者は自分の目で、人の歯を折った者は自分の歯で、つぐなわなければならない)と命じられたことを聞いたであろう。
5:39 しかしわたしはあなた達に言う、悪人に手向かってはならない。だれかがあなたの右の頬を打ったら、左をも向けよ。
5:40 (裁判所に)訴えて下着を取ろうとする者には、上着をも取らせてやれ。
塚本訳 マタ 16:21-23
16:21 この時から、イエスは自分が(神の計画どおり)エルサレムに行って、長老、大祭司連、聖書学者たちから多くの苦しみをうけ、殺され、そして三日目に復活せねばならないことを弟子たちに示し始められた。
16:22 するとペテロはイエスをわきへ引っ張っていって、「主よ、とんでもない。そんなことは絶対にいけません!」と言って忠告を始めた。(救世主が死ぬなどとは考えられなかったのである。)
16:23 イエスは振り返って、ペテロに言われた、「引っ込んでろ、悪魔、この邪魔者!お前は神様のことを考えずに、人間のことを考えている!」
塚本訳 マタ 26:51-54
26:51 すると、見よ、イエスと一しょにいた一人の人が手をのばして剣を抜き、大祭司の下男に切りかかって片耳をそぎ落してしまった。
26:52 その時イエスが言われる、「剣を鞘におさめよ。剣による者は皆、剣によって滅びる。
26:53 それとも、父上にお願いして十二軍団以上の天使を今すぐ送っていただくことが、わたしに出来ないと思うのか。
26:54 しかしそれでは、かならずこうなる、とある聖書の言葉は、どうして成就するのか。」
塚本訳 ルカ 23:20-21
23:20 ピラトはイエスを赦したいので、ふたたび人々に呼びかけたが、
23:21 人々は(ただ)、「十字架につけろ、それを十字架につけろ」とどなりつづけた。
塚本訳 ルカ 23:35-37
23:35 民衆は立って『見物していた。』最高法院の)役人たちは『鼻で笑って』言った、「人を救ったのだ、(今度は)自分を救えばいいのに、神の救世主、(神に)選ばれた者なら!」
23:36 兵卒らも近寄って、』酸っぱい葡萄酒を』(その口許に)差し出しながら、イエスをなぶって
23:37 こう言った、「お前がユダヤ人の王様なら、自分を救ってみろ。」
Cイエスの思想は地上王国の回復や王による戦争なき平和の構築ではなかった
塚本訳 ヨハ 18:36-37
18:36 イエスが答えられた、「わたしの国はこの世のものではない。もしわたしの国がこの世のものであったら、わたしの手下の者たちが、わたしをユダヤ人に渡すまいとして戦ったはずである。しかし実際のところ、わたしの国はこの世のものではない。」
18:37 そこでピラトが言った、「では、やっぱりお前は王ではないか。」イエスが答えられた、「王だと言われるなら、御意見にまかせる。わたしは真理について証明するために生まれ、またそのためにこの世に来たのである。真理から出た者はだれでも、わたしの声に耳をかたむける。」
D信仰は現実逃避ではない。来世と復活に希望が湧く人間が真にこの世を愛す
塚本訳 マコ 8:35-37
8:35 (十字架を避けてこの世の)命を救おうと思う者は(永遠の)命を失い、わたしと福音とのために(この世の)命を失う者は、(永遠の)命を救うのだから。
8:36 全世界をもうけても、命を損するのでは、その人になんの得があろう。
8:37 また、人は(一度失った永遠の)命を受けもどす代価として、何か(神に)渡すことができようか。
塚本訳 ロマ 8:18
8:18 (しかもこの苦しみは恐れることはない。)なぜなら、わたしはこう考える。今の世の苦しみは、わたし達に現われようとしている栄光(──キリストと一しょに神の国の相続人になる最後の日の大いなる光栄──)にくらべれば、言うに足りない。
E詩篇16篇5-6節を新約の光で読む。祭司たる信者は土地や財産を欲しない
新共同 民 18:20
18:20 主はアロンに言われた。「あなたはイスラエルの人々の土地のうちに嗣業(しぎょう)の土地を持ってはならない。彼らの間にあなたの割り当てはない。わたしが、イスラエルの人々の中であなたの受けるべき割り当てであり、嗣業(しぎょう)である。
新共同 申 10:9
10:9 それゆえレビ人には、兄弟たちと同じ嗣業(しぎょう)の割り当てがない。あなたの神、主が言われたとおり、主御自身がその嗣業(しぎょう)である。
塚本訳 Tペテ2:4-5
2:4 彼は人からは(役に立たぬと)棄てられたが、神の前では、『選ばれた尊い』活きた『石』(である。)
2:5 そして君達自身も(主と同じく)活きた石として建てられて、霊の家となれ。これは君達が聖い祭司として、イエス・キリストによって神の御意(みこころ)に適(かな)う霊の供物(そなえもの)を献げるためである。
塚本訳 マタ 6:31-33
6:31 だから、『何を食べよう』とか、『何を飲もう』とか、『何を着よう』とか言って、心配するな。
6:32 それは皆異教人のほしがるもの。あなた達の天の父上は、それが皆あなた達に必要なことをよく御承知である。
6:33 あなた達は何よりも、御国と、神に義とされることとを求めよ。そうすれば(食べ物や着物など)こんなものは皆、(求めずとも)つけたして与えられるであろう。
F国籍が天にあると自覚する信者は世の富や楽しみとは無縁で主が喜びの嗣業
口語訳 ピリ
3:20
3:20 しかし、わたしたちの国籍は天にある。そこから、救主、主イエス・キリストのこられるのを、わたしたちは待ち望んでいる。
塚本訳 ルカ 1:47
1:47 わたしの霊は、『救い主なる神を喜びたたえる、』
塚本訳 マタ 5:12
5:12 小躍りして喜びなさい、褒美がどっさり天であなた達を待っているのだから。あなた達より前の預言者たちも、同じように迫害されたのである。
塚本訳 マタ 19:27-29
19:27 その時、ペテロが口を出してイエスに言った、「でも、わたし達は(あの金持とちがいます。)この通り何もかもすてて、あなたの弟子になりました。わたし達にはいったいなんの褒美があるのでしょうか。」
19:28 イエスが彼らに言われた、「アーメン、わたしは言う、新しい世界が生まれて、人の子(わたし)が栄光の座につく時には、わたしの弟子になったあなた達十二人も十二の王座について、イスラエル(の民)の十二族を支配するのである。
19:29 そしてわたしのために家や兄弟や姉妹や父や母や畑をすてた者は一人のこらず、(この世で)その幾倍を受け、また(来るべき世では)永遠の命をいただくのである。
塚本訳Tコリ15:49-50
15:49 こうしてわたし達は土の人の姿を帯びたように、(復活の時は)天の人の姿を帯びるであろう。
15:50 兄弟たち、わたしの言うのはこのことである。血肉の人間は神の国を相続することは出来ず、死滅が不滅を相続することはない。
塚本訳ロマ 8:38-39
8:38 なぜなら、わたしは確信している、死でも命でも、天使でも支配(天使)でも、現在起こっていることでも将来起こることでも、権力(天使)でも、
8:39 高い所のものでも低い所のものでも、その他どんな創造物でも、わたし達の主キリスト・イエスによる神の愛から、わたし達を引き離すことはできない。
G私達の嗣業は来世の土地と国。その実現は終末有体的復活の時。信じて待つ
塚本訳 ヘブ 11:13-16
11:13 信仰に従い、これらの人たちは皆、(地上では)約束のものを受けずに死んだのである。彼らはただ遠くからそれを眺めて歓迎し、自分たちは、『この地上では外国人であり、旅の者』であると認めた。
11:14 このように(自分を外国人、旅の者と)言う人々は、(ほかにある)自分の国を追及していることを現わしているからである。
11:15 もしも彼らが出てきた所、(すなわちカルデヤのウル)のことを思ったのであったら、(いくらも)引き返す機会があったはずである。
11:16 しかし今や彼らは(地上のものに)まさる天の国を熱望しているのである。だから神も、彼らの神と言われることを恥とされない。彼は彼らのために(天に)都を用意されたのであるから。
塚本訳 マコ 8:38
8:38 (わたしを信ずると言いながら、)神を忘れた、罪のこの時代において、わたしとわたしの福音(を告白すること)とを恥じる者があれば、人の子(わたし)も、父上の栄光に包まれ、聖なる天使たちを引き連れて(ふたたび地上に)来る時、その(臆病)者を(弟子と認めることを)恥じるであろう。」
塚本訳 ロマ 8:18
8:18 (しかもこの苦しみは恐れることはない。)なぜなら、わたしはこう考える。今の世の苦しみは、わたし達に現われようとしている栄光(──キリストと一しょに神の国の相続人になる最後の日の大いなる光栄──)にくらべれば、言うに足りない。
H信仰が違う者に対してイエスが採った態度は、終末における神の裁きに期待
塚本訳 マタ 13:27-30
13:27 使用人たちが来て家の主人に言った、『ご主人、畑には良い種をまかれたのではないですか。すると毒麦はどこから来たのでしょうか。』
13:28 主人がこたえた、『敵のしわざだ。』使用人たちが言う、『では、行って抜き取りましょうか。』
13:29 主人が言う、『いや、毒麦を抜き取ろうとして、麦まで一しょに引き抜くかも知れない。
13:30 両方とも刈入れまで育つままにしておけ。刈入れの時、わたしが刈入れ人たちに言いつける、まず毒麦を抜き取り、束にしばって焼きすてよ、麦の方は集めて倉に入れよ、と。』」
塚本訳 マタ 15:12-14
15:12 あとで弟子たちが来てイエスに言う、「パリサイ人がお話を聞いて腹を立てたことを御存じですか。」
15:13 イエスは答えられた、「わたしの天の父上がお植えにならないものは皆、引き抜かれる。
15:14 あの人たちを放っておけ。盲人の手引をする盲人だ。盲人が盲人の手引をすれば、二人とも穴に落ちよう。」
塚本訳 マタ 26:63-66
26:63 しかしイエスは黙っておられた。大祭司が言った、「生ける神に誓ってわれわれにこたえよ。お前が、神の子救世主か。」
26:64 イエスは(はじめて口を開いて)彼に言われる、「(そう言われるなら)御意見にまかせる。だが、わたしは言う、あなた方は今後『人の子(わたし)が』『大能の(神の)右に坐り、』『天の雲に乗って来るのを』見るであろう。」
26:65 そこで大祭司は自分の上着を引き裂いて言った、「冒涜だ!これ以上、なんで証人の必要があろう。諸君は今ここに(おのれを神の子とする許しがたい)冒涜を聞かれた。
26:66 (この者の処分について)お考えを承りたい。」「死罪を相当とする」と彼らが答えた。
塚本訳 マタ 27:11
27:11 さて、イエスが総督の前に立たれると、総督はイエスに問うた、「お前が、ユダヤ人の王か。(お前はその廉で訴えられているが。)」イエスは言われた、「(そう言われるなら)御意見にまかせる。」
塚本訳 ヨハ 19:19-22
19:19 ピラトはまた捨札を書いて十字架の上に掲げさせた。ナザレ人イエス、ユダヤ人の王と書いてあった。
19:20 多くのユダヤ人がこの捨札を読んだ。イエスが十字架につけられた場所は、都に近かったからである。かつ捨札は、ヘブライ語、ラテン語、ギリシャ語で書いてあった(ので、だれにでも読むことが出来た。こうしてピラトは、イエスが救世主であることを全世界に証ししたのであった。)
19:21 するとユダヤ人の大祭司連がピラトに抗議して言った、「『ユダヤ人の王』と書かず、『この者は、ユダヤ人の王と自称した』と書き直してください。」
19:22 ピラトが答えた、「わたしが書いたものは、わたしが書いた通り。」