本物を感じとることができる人
使徒伝承という正統信仰を担う無名の人々
2006.7.2
東京聖書読者会 高橋照男
何が正統信仰であるのかの混乱
● 渡辺善太牧師の「無教会は聖書を尊重するが、聖書は教会が結集したのだ」という主張に対して。・・・・・教会概念の検討を要す。
● 異端思想の排除はキリスト教の歴史。それは見えざる神の手の働き
● 「ダビンチコード」「ユダの福音書」のブーム
● 次々と発見されるグノーシス文書。・・・・今、どう考えるべきか
● グノーシスとは何か。仮現論、霊肉分離論。歴史的に消え去った。
正統信仰は誰によって伝承されるか
● 本物を感じ取ることができる無名の人々の力
● 聖書の正典は本物を感じる人々によって誕生し継承されてきた
●
「福音は一人の力でなく福音それ自身の力によって広まった」
● ヨハネ福音書の主役は無名の「主の愛する弟子」
聖書の正典は個人ではなく、初期キリスト教の歴史自身が決定
● 新約聖書の27文書が最終的に結集されたのは4世紀半ばごろ
● アレキサンドリアの司教アタナシオスが「この27文書に何かを足しても引いてもいけない」と言った。グノーシス思想の排除。
● 「この頃にはアタナシオスが発言しなくても「正典」の構成文書は現行のとおりでほぼ固まっていた。本当の意味で「正典」のリストを定めたのは個人ではなく、初期キリスト教の歴史そのものなのである。」(筒井賢治「グノーシス」・・古代キリスト教の異端思想・・)講談社P158)
本物だと感じる能力。偽者を嗅ぎ分ける能力は個人に帰する
塚本訳 マタ 7:28-29
7:28
イエスがこれらの話を終えられた時、一しょに聞いていた群衆はその教えに感心してしまった。
7:29 自分たちの聖書学者のようでなく、権威を持つ者のように教えられたからである。
塚本訳 マタ 16:16-17
16:16 シモン・ペテロが答えて言った、「あなたは救世主、生ける神の子であります!」
16:17
するとイエスは(喜んで)ペテロに答えられた、「バルヨナ・シモン、あなたは幸いだ。これをあなたに示したのは血肉([人間]の知恵)でなく、わたしの天の父上だから。
塚本訳 マタ 12:41-42
12:41
しかし人々は信じない。(だから)ニネベの人がこの時代の人と一しょに(最後の)裁き(の法廷)にあらわれて、この人たちの罪が決まるであろう。というのは、ニネベの人はヨナの説く言葉に従って悔改めたが、(この人たちは、)いまここにヨナよりも大きい者がいる(のに、その言葉に従わない)からである。
12:42
また、南の国(シバ)の女王がこの時代の人と一しょに(最後の)裁きの(法廷に)あらわれて、この人たちの罪が決まるであろう。というのは、彼女は地の果てからソロモン(王)の知恵を聞きに(エルサレムに)来たが、(この人たちは、)いまここにソロモンよりも大きい者がいる(のに、それに耳を傾けない)からである。
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イエス自ら「神の子」と言わなくても、この言葉で何かを感じ取る能力が必要
塚本訳 マコ 4:10-12
4:10 ひとりでおられた時、弟子たちが十二人とともにこれらの譬(の意味)を尋ねると、
4:11
言われた、「あなた達(内輪の者)には、神の国の秘密が授けられている(のでありのままに話す)が、あの外の人たちには、すべてが譬をもって示される。
4:12
これは(聖書にあるように)『彼らが見ても見てもわからず、聞いても聞いても悟らないようにする』ためである。『そうでないと、心を入れかえて(わたし[神]に帰り、罪を)赦されるかも知れない。』」
塚本訳 マタ 13:16-17
13:16 だが、あなた達の目は見、耳は聞くから幸いである。
13:17
アーメン、わたしは言う、多くの預言者と義人とは、あなた達が(いま)見ているものを見たい見たいと思ったが見られず、あなた達が(いま)聞いているものを聞きたい聞きたいと思ったが、聞かれなかったのである。
塚本訳 使
13:46-49
13:46
そこでパウロとバルナバとは公然こう宣言した、「神の言葉は(お約束どおり)まず第一に、君たち(ユダヤ人)に語られねばならなかった。(だから、そうしたのだ。)しかし君たちがそれをはねつけ、自分で自分を永遠の命にふさわしからぬ者とするので、それでは、よし、異教人(の伝道)へ方向をかえる。
13:47
主はこのようにわたし達(伝道者)にお命じになっているから。『わたしはあなたを立てて異教人の光にした、あなたが地の果てまで救いを伝えるために。』」
13:48
これを聞いて異教人は喜び、主の言葉を讃美し、永遠の命へあらかじめ定められていた者はみな信者になった。
13:49 こうして主の言葉がこの地全体に広まった。
塚本訳 使
16:14
16:14
するとテアテラ町の紫毛織物の商人で、敬信家のルデヤという婦人が聞いていたが、主はその心を開いてパウロの話に耳を傾けさせられた。
エクレシアの誕生と継承は無名の個人の正統信仰による
●本物の信仰でないというその徴候。歴史は繰り返す。
三位一体の信仰の希薄、減衰、否定。復活の否定。
周辺のことに熱心。ヒューマニズム、社会運動、文芸運動
グノーシス的なものに興味。歴史性の軽視
復活は有体的でなくてもよいという思想。
大貫隆「イエスという経験」「イエスの時」
イエスの死の「解釈そのもの」が復活体験だという誤り
内村鑑三は「古き古き十字架の信仰」
塚本虎二は「古典的プロテスタンティズム」(山下次郎)
●無教会主義の価値と特徴は、職業宗教家ではない無名の素人達が2千年の正統信仰を固く握って揺るがない集団を形成していること。これは神の植え給う深い恩恵
●「あの人の信仰はなんとなく変だ、どうしようもなくつまらない話だ」と感じる人はその信仰が健全である証拠。
● 正統信仰は集会の空気が造り、保持する。自然の力、神の力。
新共同
ルカ 5:39
5:39
また、古いぶどう酒を飲めば、だれも新しいものを欲しがらない。『古いものの方がよい』と言うのである。」
塚本訳 マタ 13:51-52
13:51 あなた達はこれが皆わかったか。」「はい」と弟子たちがこたえる。
13:52
イエスは言われた、「(これがわかれば、すべてがわかるのである。)だから天の国のことに通じた学者は皆、自分の倉から新しいものと古いものとを(心のままに)取り出す家の主人に似ている。(古い教えと新しい教えとを自由に使いこなすことが出来る。)」
●歴史から消え去ったグノーシス思想。エジプトの砂の中に埋もれた文書。
塚本訳 マタ 15:12-13
15:12
あとで弟子たちが来てイエスに言う、「パリサイ人がお話を聞いて腹を立てたことを御存じですか。」
15:13
イエスは答えられた、「わたしの天の父上がお植えにならないものは皆、引き抜かれる。
塚本訳 マタ 13:27-30
13:27
使用人たちが来て家の主人に言った、『ご主人、畑には良い種をまかれたのではないですか。すると毒麦はどこから来たのでしょうか。』
13:28
主人がこたえた、『敵のしわざだ。』使用人たちが言う、『では、行って抜き取りましょうか。』
13:29 主人が言う、『いや、毒麦を抜き取ろうとして、麦まで一しょに引き抜くかも知れない。
13:30
両方とも刈入れまで育つままにしておけ。刈入れの時、わたしが刈入れ人たちに言いつける、まず毒麦を抜き取り、束にしばって焼きすてよ、麦の方は集めて倉に入れよ、と。』」
塚本訳 ルカ 9:49-50
9:49
ヨハネが言った、「先生、あなたの名を使って悪鬼を追い出している者を見たので、止めるように言いました。わたし達と一しょに(あなたに)従わないからです。(しかし言うことを聞きませんでした。)」
9:50
イエスはヨハネに言われた、「止めさせるには及ばない。反対しない者はあなた達の味方である。」
●今後とも起こりうるグノーシス関連文書の発見は出版社が儲かるのみ。同時に正統信仰を持つ人間にとっては、その都度正典結集に働いた神の手のありがたさを再認識する。
無教会主義者は仮現論者(グノーシス)か。無教会者の本物指向
●塚本虎二は仮現論者だという批判。政治に無関心、異言論者の出現。
●塚本虎二の職業論に感銘。弟子たちはこの世の職業に忠実熱心の事実。
●ルカ16章9-13「富の利用」の解釈。無教会は聖書本文の深い解読が必要。