高橋照男保有の初代教会史関連文献リスト

           2007.3.18

 

1・秀村欣ニ選集1「新約時代史」(キリスト教図書出版)・・・無教会陣営の遺産、古典。

無教会主義集会としては一応これを土台としなくては使徒以後は語れないと思われます

2・秀村欣ニ選集2「キリスト者の信仰」(キリスト教図書出版)・・・内村先生の歴史観、無教会主義と原始キリスト教、霊魂不滅と肉体の復活、などの論考が収録されており、秀村先生のしっかりした正統信仰が明快にあらわれていて秀村史観が安心して読めるということがわかる巻。信仰者の語る歴史観はとにかくまず信仰がしっかりしていないとまずい。

3・秀村欣ニ選集4「論文―ギリシャ・ローマ史―」(キリスト教図書出版)

背教者ユリアヌスに関するものが4本もあるのに注目します。最近高橋三郎先生が、この本に背教者ユリアヌスに関するものが4論考もあることに注目。キリスト教が異教とどう対決したかの研究にユリアヌスは大切。しかしうっかりすると異教的俗化思想に堕落。

4・「原典新約時代史」・・ギリシャ・ローマ・ユダヤ・エジプトの資料による・・(山本書店)山本七平入魂757ページの大著。「歴史はまず原資料にあたれ」ということからの作。ローマの資料、ヨセフス、ラビ文学、セプトァギンタ(70人訳)、など網羅的。編者は秀村、蛭沼、新見、荒井、加納、小河など当時のオールスターキャスト。山本書店の栄光。

5・カール・ホイシ「教会史概説」荒井献、加賀美久夫 共訳(新教出版社)これも古典。

荒井先生からは「復活論」でお手紙を何度も頂いておりますが、我々塚本グループを「塚本シューレ(学校)」と呼んで「処女降誕と復活」をまともに信じているグループだと一目を置いてくださっているのは感謝です。この外部評価が我々のレゾンデートルと思います。

6・コンツェルマン「時の中心」ルカ神学の研究。田川建三訳(新教出版社)・・これも古典。救済史の概念。昨年、田川建三20年ぶりの東京講演を聞きに言ったとき、主催者の一人が「塚本に学んでいる者」と私を紹介、田川氏は私の目を穴の開くほどじっと見られました。やはり田川氏も塚本グループに一目置いておられることがわかりました。

7・「総説・キリスト教史@原始・古代・中世編」荒井献 出村みや子 出村彰(日本キリスト教団出版局)。先週2007.2.23に出版されたばかりのもの。まずこれが今日では最高。秀村先生の「新約時代史」の今日の版というべきもの。今となってはまずこれを土台にすべきものと思います。昨年の「日本聖書学研修所」講演会では本書の著者である荒井先生や出村みや子さんとも懇談しました。

8・「総説・キリスト教史A宗教改革編」監修 荒井献 出村彰(日本キリスト教団出版局)。

このシリーズのBは「近・現代編」ですが未完です。横田さんが教会史の「近・現代」を発表される頃にはあるいは間に合うかもしれません。

9・「キリスト教2000年史」(いのちのことば社)ニューヨークタイムズが絶賛というだけあってかなり俗受けするもの。写真が多い。読む気がしないもの。

10・ボーア「初代教会史」(教文館)・・・・600年ぐらいまでのかなり広範囲なもの

11・有賀文彦「アタナシオスの救済論」大森講座[(新教出版社)・・・この大森講座シリーズは前から注目していて何冊も購入しています。学問的水準が高い講座とみなします。

12・S・ブラウン「キリスト教の起源」(ヨルダン社)・・・題名にかかわらず幅が広い。

ただし「空虚な墓」の使徒伝承から逸脱した叙述にはNO!と言いたい。「空虚な墓」が史実であったことは、荒井献、佐藤研の両氏と信仰が一致した。また小林稔氏(カトリック神父)とは「空虚な墓を述べることは復活信仰告知の必要条件であるが十分条件ではない」ということでこれまた信仰が一致。その十分条件とは個の復活体験。今における聖霊体験。

13・エイセビオス「教会史T」秦剛平訳(山本書店)・・・・原典資料。山本書店はわが国聖書学の水準を高めた。山本七平が尊敬する人は塚本虎二。NHK宗教の時間で放送。

14・クルマン「キリストと時」前田護郎訳(岩波現代厳書)、・・・救済史の概念。歴史は俗的見地からではなく救済史の観点から見ないと片手落ち、否、それは本質読みではない。ヒストリーはヒズ(神の)ストーリー。人間欲のストーリーではない。これ信者の歴史観。

15・「新約聖書正典の成立」荒井献編(日本基督教団出版局)・・・この種のものでは最高。

16・「ローマ皇帝礼拝とキリスト教徒迫害」弓削達・・・この分野の第一人者の本。著者は経済学博士であることに注目したい。著者は多分すでに逝去。

17・シューベルト「教会史綱要」井上良雄訳(新教出版社)・・・教会史の古典、かって腎臓結石の手術で入院中に読んだものだが読了したかどうか失念。

18・M・ヘンゲル「神の子・キリスト成立の過程」(山本書店)・・・歴史を動かす内的原因を探らないと真の歴史は見えない。山本書店は高度なものを出版していた。早世で無念19・蛭沼寿雄「新約正典のプロセス」(山本書店)・・・無教会陣営の著者。わが国の正典論の高い水準を示すもの。これを無教会者が執筆したところに意味がある。

20・石原謙著作集第3巻、初期キリスト教研究(岩波書店)・・文化勲章受賞の感想で「わが国のキリスト教史学が認められたことを喜ぶ」と言われた。金字塔。全11巻保有。

21・石原謙著作集第7巻、初期キリスト教史(岩波書店)・・・巨視的観点からのもの

22・石原謙著作集第8巻、初期キリスト教史(岩波書店)・・・アウグスチヌス付近の論考。

23・筒井賢治「グノーシス」古代キリスト教の異端思想(講談社)・・・グノーシスの勉強は富士の樹海。入ったら出てこられない。その道の専門家も出られないでいる。職業上の知的興味特有の細かさだけ。そこで私がグノーシスに対して取った方法は、「ヨハネの手紙」を裏返しにして読む方法。集会での発表はこの手法をとった。この手紙は主としてグノーシスに対決している。門外漢がグノーシスに対する方法はこれが健全で安全と心得た。

24・小島潤「新約聖書正典の編成と伝承」(聖文舎)・・・・水準はイマイチ。

25・荒井献「原始キリスト教とグノーシス主義」(岩波書店)・・荒井先生は確かこの本で学士院賞をとられたと思う。この分野の権威的書籍。

26・大貫隆「ロゴスとソフィア・・ヨハネ福音書からグノーシスと初期教父への道」(教文館)・・・どうもピンとこない。しっくりしない。読解に困難。その道の専門家の本。

27・大貫隆「グノーシスの神話」(岩波書店)・・・この分野を仕事にしている人の本。素人から見れば初代キリスト教が捨てたものを興味本位でゴミ箱をあさるようなもの。「見て過ぎよ」(ダンテ)で対処したい。変なものはダメさかげんが匂いで分かる。ナグ・ハマディ文書などにも言及しているがもう下火。今ではユダの福音書などになっているが、これももう下火。出版社の商売に振り回された興味本位の一時的ブームであった。人生は短い。

28・大貫隆「グノーシス考」(岩波書店)・・・・岩波がよくもまーここまで次々とグノーシスを出すなーと言う感じ。どう読んでも分かりにくい。読む気になれない。

29・「インタープリテーション」1994.9No29[キリスト教と諸宗教との出会い]・・雑誌

30・島創平「初期キリスト教とローマ社会」(新教出版社)・・・・著者の父上は無教会の故島忠勇氏で故坂上百合子さんの弟。著者の専攻は古代ローマ史、初期キリスト教史で秀村先生の後継者と目されている。著者は私の知人で56歳。後が無い。急いでもらいたい。

31・トロクメ「キリスト教の揺籃期」(信教出版社)・・・・これはよかった。「復活によって正当性が証明されたキリスト」という重要な言葉がある。P43.

32・渡辺信夫「古代教会の信仰告白」・・・信条の研究大著。信条はこれを真面目に扱わないとまずい。田川建三の講演会でフロアーから「(現代人が信じにくい)使徒信条などはないほうがよいのではないか」とバカなことを質問した人間がいた。田川は怒気を含んで「そういうことを信じていた人がいたという歴史的事実を認めよ」と答えた。これで私は田川を見直した。とにかく使徒信条を軽視する勝手な人間は相手にできない。話にならない。

33・関川泰寛「ニカイア信条講解−キリスト教の精髄」(教文館)・・・正統信仰がぐらついている今日、オーソドックスなもの。入門書。

34・M・ヘンゲル「ゼーロータイ―紀元後一世紀のユダヤ教熱心党」(新地書房)600ページの大著。マタイ7章「偽預言者」の研究のときに購入。1986.9.28.新地書房の快挙

35・H・クラフト「キリスト教教父事典」(教文館)2003.1.6に教父に関心をもったので購入。538ページの大著。キリスト教が広まった原因は「教父の人格的存在」だと見る。

36・クルマン「ペテロ 弟子・使徒・殉教者」(新教出版)、キリスト教の土台は何と言ってもペテロ。ヨハネ21章がそれを暗示している。カトリック側から高く評価されたもの。

37・R・Hベイントン「世界キリスト教史物語」(教文館)著者はキリスト教史の泰斗。この本は火災になる前に読んで大いに感銘したものです。このたび、アマゾンの古書情報で再入手できました。

38・霜田美樹雄「キリスト教は如何にローマに広まったか」(早稲田大学出版部1980)

著者は無教会の鈴木福治先生のところの方です。アマゾンで出てきましたので、近日中に入手しようと思います。先日、霜田氏を知る方と話をしましたが、氏はロシアのキリスト教にも詳しいそうです。同じ著者で「キリスト教は如何にして現代に生きるか」があります。身近な無教会からこのような「真摯」な本が出たことを嬉しく思います。

39・ウェルネル・ケラー 山本七平訳「歴史としての聖書」(山本書店)この第2編の2は「使徒の時代」ここに「使徒のその先」も若干含まれています。

40・山谷省吾「イエスとパウロ 原始キリスト教」(東神大パンフレット][)異邦人教会について触れている。著者は塚本先生と並ぶわが国第一級の聖書学者であった。

40・加藤隆「新約聖書はなぜギリシャ語で書かれたか」(大修館)。この第15章は「新約聖書と世界」で聖書が「使徒のその先」にどういう影響をもたらしたかに若干触れている。

41・比屋根安定「福音と異教地盤」(日本基督教団出版部1961)。著者は諸宗教全般に強い。イスラム教、インドの宗教、仏教、神道との関係にも触れる。福音と諸宗教との出会い。

42・藤井孝夫「キリストの復活事件と教会」(新教出版社)。人は復活伝承の宣教の言葉を聞いてそれを信ずることによって神と出会う。それ以外のいかなるところにおいても出会わない。P138。教会は今、現在でなければならない。P155.。「使徒のその先」の本質。

43・山谷省吾「キリスト教の起源(下巻)」(新教出版社)。15章「使徒後時代における教会の諸問題と教会書簡」、18章「使徒教父」、19章「グノーシス主義」、20章「マルキオン」、21章「ユスティヌスと弁証論者たち」、22章「新約正典の成立」、23章「使徒信条と古カトリック教会」、24章「第2世紀後半の教会・・・モンタヌス、アイレナイオス、殉教者・・・この本は古典、定番、教科書。安心して読める

44・Jヘルジランド他「古代のキリスト教と軍隊」(教文館1988)初代キリスト教徒たちは戦争をどのように考えていたか?の問題。この種の本は、自分の思想を歴史に読み込まないために大切。

45W・イェーガー「初期キリスト教とパイディア(教養)」(筑摩厳暑30)初期キリスト教が世界宗教として確立するにいたる過程。・・講演記録で目次が無くて読みにくく未読。

46・ブルトマン・クンズィン「聖書の伝承と様式」(未来社)この第二部が「使徒のその先」をあつかっている。

47・ブルトマン「歴史と終末論」(岩波)第10章が「キリスト教信仰と歴史」。未読。ブルトマンは古くなった。

48・秀村欣ニ選集5(最終巻)「論文――キリスト教史」(キリスト教図書出版)これは未着。2007.3.16に編者の片山祐三氏からお手紙をいただきました。「現在編集中であり、もうしばらくお待ちください」とのことです。待たれるものです。

49・旧約・新約「聖書大事典」(教文館1989)の聖書歴史年表。ドイツ版底本の翻訳

50・「キリスト教大事典」(教文館1983)の新約聖書時代史・教会史年表は世界的な広まりまで書かれてあって分かりやすい。学問的には上記49に劣る感じがするが、日本人が作成したものらしく日本アジア、アメリカも含むもので興味深い。御必要ならばコピーします

51・「新聖書大辞典」(キリスト新聞社1971)聖書歴史年表・・・・簡単すぎる。努力不足

 

inserted by FC2 system